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流派の特色

伝統と革新

未生流笹岡は、1919年、笹岡竹甫により創流されました。西洋から渡来した園芸植物を用いた新しい型「盛花」がまさに全国に広がりはじめた頃でした。当時、未生流(江戸時代後期、未生斎一甫により大阪で創始されたいけばなの流派)の高弟であった竹甫は、それまでの盛花には充分に古典の技法が活かされていないと考え、未生流の特色である鱗形(直角二等辺三角形)を踏襲した笹岡式盛花を編み出し、一派を立てました。この笹岡式盛花に代表される通り、未生流笹岡は、伝統と革新を兼ね備えた流派です。

理論派の華道

いけばなが目指すのは「型破り」です。しかし、型を破るためには、まず基本となる型をしっかり身につけ、それを土台として、時代に合った新たな美を追求しなければなりません。いけばな教室は、その基礎を学ぶ場です。

未生流笹岡に入門すると、先人が考案した型に、花枝の長さや配置・角度を書き添えた図面「寸法表」を手渡されます。この図面の通りに花を組み立てていけば、初心者でも、美しい花姿に整えることができます。寸法表を用いた理論的な教授方法は、未生流笹岡の大きな魅力の一つです。

                        

いけばなは哲学

未生流笹岡は、流派名に「未生(みしょう)」を冠しています。未生とは、いまだうまれず。つまり、花が生まれる以前にまで思いを巡らせなさいという教えです。植物は、太陽や大地の恵みを受けなければ、美しい花を咲かすことはありません。古来、日本人は、花の技術の上達ばかりに執心するのではなく、天地創造にまで思いをはせ、自然のこと、宇宙のこと、そして人生について考えてきました。いけばなは「理論」であると同時に「哲学」である、とも言えます。

                        

レス・イズ・モア

未生流笹岡の花姿は、すっきりと洗練された「引き算の美」。重なりあった枝葉を極限までそぎ落とし、一輪の花、一枚の葉の輪郭まで際立たせます。この手法は、近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエのデザイン論“Less is more”(厳選されたより少ない素材で、より豊かな空間をつくる)に例えられます。

流花「かきつばた」

未生流笹岡の流花は、かきつばた。「かきつばたの笹岡」として全国にその名を知られています。日月和合の色とされる紫を花色に持ち、古来、最高位の花として大切にされてきた花です。かきつばたの場合も、寸法と葉組(葉の組み方)が定められています。