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いけばなの歴史

自然崇拝

日本人は農耕民族であり、自然と私たちの生活は密接な関わりを持っていました。日照りや大雨が続くと作物の出来が左右されます。自然は恐ろしいものです。しかし、秋になると必ず私たちに実りを与えてくれます。自然は素晴らしいものでもあります。このような自然崇拝(自然に対する畏敬の念)が、いけばなのルーツです。

初期のいけばなは、大きく3つの流れに分けることができます。

1.神の依代

古来、日本人は自然をおそれ敬い、大きな岩や山、島、森、木などを神の宿る依代(よりしろ)として、崇拝してきました。ある時、私たちの祖先は、家の中にも神が宿るようにと、依代を家に持ち帰ろうとします。

山や島は大きすぎて到底運べないので、松の木を選びました。松は、年中青々とした葉をつけている常緑樹であり、長寿で、かつ大きく成長するので、神の依代とされたのです。こうして持ち帰った松を、家の玄関に飾ったのが門松で、床の間に飾ったのがいけばなです。

2.仏前の供花

日本人は、古来、先祖を大切にしてきました。毎日のお仏飯や茶、花以外にも、命日などには果物やお菓子を供物として頂き、仏前に並べられます。

ところで、この中で、花だけは特別だと思いませんか? 先祖に供えるものの中で、花だけは、空腹を満たすことはできません。花だけが、即物的でないのです。死してなお、いとおしむ美しい花。花には、いつまでも私たちを惹きつける不思議な魅力があるのですね。

3.鑑賞や室内装飾としてのさしばな

現在、日本文化と呼ばれているものの多くは、室町時代に生まれています。室町時代には、平安時代の天皇や江戸時代の将軍のような、絶対的な中央権力が存在しませんでした。権力を握っていたのは、公家、武士、寺社とさまざま。いろんな人たちがそれぞれに力を持っていたので、ちょうど今の国際社会と同じで、争いを避けるために外交が大きな役割を果たします。

「会所」と呼ばれる接客専用の空間が生まれ、お客さんを迎えます。でも、単に接客するだけじゃつまらない。せっかく集まったのだから、「みんなで遊びましょう」ということになります。寄合をするのです。そこで、花や茶や香や歌で遊んだのが、現在の華道、茶道、香道、歌道のはじまりです。

いけばなは生まれながらにして、人と人との関係を円滑にする役割を担っていました。いけばなは、人と人とが仲良くなるための潤滑油なのですね。

現代のいけばなでは、1・2の宗教的な意味は薄れて、このように、みんなで楽しむといった意味合いが強まっています。家族や友人と楽しんだり、お客様をもてなすための花、つまり、私たち自身のためのいけばなです。